ゆけゆけマウンテンバイク
小学4年の時に買ってもらった6段変速のマウンテンバイク。これさえあれば俺はどこへだって行ける そう思っていた。
強請(ねだ)ってから買い与えられるまで3年の歳月を要し、誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを兼ね合わせ、ようやく手に入れた紫色のマウンテンバイクを俺は家宝として大切に扱った。
転んで傷をつけるなんてもってのほか、他の誰にもサドルをまたがせる事なく俺は、独り風をきって毎日同じ田舎道をぐるぐると意味もなく走っていた。
同じ道を走ってばかりで飽きてきたころ、前述の通りこのマウンテンバイクなら本当にどこへだって行けると思った。 ゲームセンターのある隣町、テレビでしか見た事のない東京、ニューヨーク、死んだじぃちゃんのところだって。目の前が無限の希望で広がった。
日曜日の早朝、俺は独り決意し、親にも友人にも黙ってマウンテンバイクを漕ぎ出し、放浪の旅に出た。
手作りのおにぎり(中身はシーチキン)をカゴに入れ、時に片手離し運転などをして陽気にペダルを漕いだ。
周りが見知らぬ景色になっても全く狼狽(うろた)えず、見知らぬ地を凄いスピードで駆け抜ける疾走感にただただ酔いしれる。 爽快だった。
しかし気付けば夕暮れ。行きはよいよい帰りは怖いとはよく言ったもので、爽快感は徐々に不安へと形を変え胸を浸食していった。
空が暗い、ここはどこだ?俺はなにをしているんだ?
不安におののく10歳の少年にとどめをさしたのは轟く雷鳴と降り注ぐ大粒の雨だった。
見知らぬ山道にマウンテンバイクを乗り捨て、俺は泣きながら山を下った。全身びしょ濡れで寒さと孤独に襲われながら走り、ようやくタクシーを見つけた。
俺は涙声ながら声を振り絞り運転手に状況を説明し、家まで送ってもらった。
家ではタクシー運転手から連絡を受け、すんでのところで捜索願を出さずに済んだ両親が玄関で風神雷神のように待ち構えていた。
風神雷神は6000円超の運賃を払い、運転手に頭を下げるや否や、俺の首根っこを掴み家に引きずり込んだ。
家の中で、外より激しい雷を落とされ、俺は目から大粒の雨を流した。 一通り怒り終えた風神雷神は
「タクシーの運賃もかかったからあんたはお年玉もなし!」
と言い放ち、見知らぬ地に乗り捨てたマウンテンバイクとの再会も果たされぬまま、まさに踏んだり蹴ったりの終末となった。
ゲームセンターにも東京にも行けなかったが、死んだじぃちゃんのところにも行かなかった。 それだけは良かったとただ切実に思う。


更新待ってました!!
その出来事を10歳で体験したのは
辛いですね・・・
でも無事でよかったです><
投稿: スゴロク | 2009年11月20日 (金) 22:28
星野さん、こんばんは。
(*^ワ^*)
お疲れ様です。
大変な思い出でしたね…。
でも、無事で何よりでした!!
本当に良かったです。
(*^ヮ^*)vv
Yu-Chan
投稿: Yu-Chan | 2009年11月20日 (金) 22:45
やっぱり星野くんって…
ギャップがすごいよね…(`・ω・)
投稿: usami | 2009年11月21日 (土) 04:07
なんか、めっちゃ感動しました!
投稿: ちろる | 2009年11月21日 (土) 10:03
星野さん、面白い!
お笑いは面白いのかどうかわかりませんが(見たことないと言う意味)、文はそこはかとなく染みる~。本にして出したらうれるんじゃないかしら。出したら絶対買いますけど。おばさん、応援しています。
投稿: じゃがいも | 2009年11月22日 (日) 09:18